前稿(「要改善」学部が1つでもあれば大学全体が「不適合」)では、文部科学省(以下「文科省」)が中央教育審議会のワーキンググループ(以下「WG」)第10回(令和8年4月27日)に示した認証評価見直し案の制度衝撃を概観した。本稿はその実務編として、実際に何で評価されるのか★★★(三つ星)を取りに行く大学は今学期から何を始めるべきかを、配付資料1-1の具体記述に即して掘り下げる。

評価の構造は「4つの基本的な方針」「7つの評価基準」「15の評価項目」の三層で組み立てられている。質保証の視点では15項目を法令水準と照合して厳格に判定し、質向上の視点では「教育活動を通じて教育成果を明確に挙げているか」を一・二・三つ星の3段階で総合評価する(資料1-1 p.11、p.16)。

1. 4方針・7基準・15項目の全体構造

4つの基本的な方針は次の通り(資料1-1 p.13〜15)。

  • I. 明確な「養成する人材像」とDPの策定・公表(評価基準2/評価項目2):人材像とDPの社会への明示、DPと国際基準・学士力等との整合性
  • II. 人材像・DP達成のためのカリキュラム・教育環境体制(評価基準2/評価項目7):CPとDPの整合、多面的な学修成果評価の考え方、CPに則ったカリ編成、適切な教員配置、AP、学修支援、学修環境
  • III. 学生の学修成果の適切な把握と評価(評価基準2/評価項目4):卒業基準・判定体制、単位認定、DP到達度の多面的把握、人材像実現をデータ・根拠で社会へ示せているか
  • IV. 学生の学びと成長の結果を基盤とした不断の自己改善(評価基準1/評価項目2):教育改善体制、ステークホルダー意見の反映

合計7評価基準・15評価項目。質保証の視点では各項目について「法令等で求められる水準を基準」とし、全ての評価機関が同一の基準に基づいて評価すべきと明記されている(資料1-1 p.12)。評価機関ごとに緩い・厳しいの差を許容しない設計である。

2. 質向上の視点:★/★★/★★★は何で分かれるか

質向上の評価は、教育活動を通じて教育成果を明確に挙げているか——すなわち、DPに定める資質・能力を備えた学生を育成できているか——という一点に集約される。判定は資料1-1 p.16の表で次のように切り分けられる。

  • ★(一つ星):質保証の水準は達しているが、教育成果の状況が次の段階に該当すると判断できない学部
  • ★★(二つ星):学生の成長につながる優れた取組を通じて、高い教育成果が期待される学部
  • ★★★(三つ星):学生の成長につながる優れた取組を通じて、高い教育成果を挙げている学部

★★と★★★を分けるのは原文上「期待される」か「挙げている」かの違いであり、本稿はこれを実務的に「期待」と「実証」の差と読み替える。実証には根拠データが要る。資料1-1は教育成果を示す根拠例として、①多面的な直接評価(授業科目の試験、成績管理、ルーブリック、eポートフォリオ、アセスメントテスト)、②多面的な間接評価(全国学生調査、振り返りシート、ルーブリックの自己評価)、③社会での活躍を示すデータ(就職先調査、卒業後調査、地域内進学率)——の3系統を列挙している(p.16)。これら3系統を組み合わせた多面的根拠を学部単位で蓄積できているかが、★★★を取れるかの分水嶺となる。

3. 「優れた取組」の判定軸:資料1-1 p.18の読み方

資料1-1 p.18には、各方針について「優れた取組の例」が列挙されている。経営層が自学の現状を当てはめる際の格好のチェックリストとなる。

  • I方針(人材像・DP):社会・地域ニーズの体系的・継続的調査、産業界・自治体・卒業生との意見交換、人材像とDPの定期的見直し、DPのアセスメントに耐えうる具体性
  • II方針(カリキュラム・環境):直接評価と間接評価を組み合わせたアセスメントプランの策定、DPと授業科目の対応関係の体系的可視化、学修支援を要する学生の早期把握と個別対応
  • III方針(学修成果把握):DP到達度を直接評価(授業評価・卒業研究等の評価・主要科目試験)を中心に、間接評価(学生アンケート等)も組み合わせた把握、卒業生・雇用先調査、キャリア追跡による卒業後の活躍状況の把握
  • IV方針(自己改善):学生や学生団体の参画、地域社会・産業界・自治体・卒業生・外部有識者からの意見反映、学修成果の可視化を組織的・継続的に分析した教育改善

特に注目すべきは、III方針で「キャリア追跡」「卒業生・雇用先調査」が明示されていることである。これは一過性の就職先データではなく、継続的な卒業後追跡を組織体制として持っているかが問われることを意味する。

4. 今学期から始めるべき3つのアクション

第一に、DPの「具体性」の自己点検。資料1-1 p.18は「DPに掲げられる資質・能力について、アセスメントに耐えうる具体性をもって定められている」を優れた取組の典型として挙げる。抽象的なDPでは★★以上は取れない。学部ごとにDPを開きなおし、「測定可能か」を全項目で検証する作業を、今学期中に始めるべきである。

第二に、アセスメントプランの整備。15評価項目のうち、II方針評価基準①項目bは「CPとDPに基づく学修成果の評価を多面的に行う考え方が策定されていること」を求める。考え方が文書化されていない学部は、この時点で項目未達となり「要改善」リスクを抱える。プラン策定→運用試行→改訂のサイクルを来年度の評価期に間に合わせるなら、今学期着手は最低ラインである。

第三に、卒業生・雇用先調査体制の構築。質向上の視点で★★★を狙うなら、社会での活躍データは必須インフラとなる。学生課・キャリアセンター単独ではなく、IR組織と連動した学部単位の継続的データ収集として設計し直す必要がある。

結び

「新たな評価」制度の核心は、評価結果を学生・社会に公開可能な根拠データで支えられているか——という一点に絞られる。15項目はすべてここに通じている。評価サイクルは6年を前提とするが(資料1-1 p.19)、評価基盤の構築には3〜4年の準備が必要である。今学期動く学部と動かない学部の差は、第1回評価時に決定的な形で表面化する。

UB研究所は、DPの具体化、アセスメントプラン策定、IR組織と連動した教育成果可視化基盤の構築のいずれの局面においても、評価対応を見据えた実務支援を提供しております。個別のご相談はお問い合わせフォームより承ります。

(参考資料)中央教育審議会大学分科会 質向上・質保証システム部会「教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ」第10回 配付資料1-1「『新たな評価』制度の在り方について(案)」(令和8年4月27日)、特にp.11〜p.19