令和9年度開設予定の設置届出一覧のうち、令和8年5月分・6月分・7月分が出そろった。3か月で27件。附帯事項が「特になし」だったのは3件にとどまり、残る24件には何らかの事項が付されている。最頻出は新設組織ではなく、既設組織の収容定員である

届出による設置は、学位の種類及び分野の変更を伴わない場合に認可を要しない手続である(主な類型では学校教育法第4条第2項第1号。私立大学の学部の学科の設置、および大学院の研究科の専攻の設置・課程変更は同項第3号と学校教育法施行令第23条の2第1項第1号による)。審議会の審査を経ない以上、認可申請に比べ負荷は軽いと受け止められやすい。

しかし一覧を3か月分通して読むと、別の構図が見える。附帯事項の欄はほとんど埋まっており、新設計画への注文も含まれるが、量的な主軸は、既設の学部・学科の収容定員が超過しているか未充足であるかという指摘にある。届出とは、新設の手続であると同時に、既設組織の定員管理が点検され、その結果が大学名入りで公表される手続でもある。

1. 要点 〜附帯事項の分布〜

件数は令和8年5月分14件、6月分12件、7月分1件の計27件である。区分別の校数の合計であり、東海学院大学と日本大学大学院が二重に計上されているため、大学実数は25である。なお4月分は二度の追加を経て計54件である(以下は令和8年8月分の一覧が未公表時点の値)。

27件の附帯事項を分類すると、次の分布になる。

  • 既設学部等の収容定員未充足の是正 16件
  • 既設学部等の収容定員超過の是正 13件(うち未充足と併記が8件)
  • 二以上の校地における教育への留意 7件
  • 定年規程に定める退職年齢を超える基幹教員等の割合 3件
  • 研究科等連係課程の連係・協力に係る留意 1件
  • 特になし 3件

以下は届出件数ベースで、1件に複数の類型・項目を含む場合がある。収容定員に関する指摘は21件に及ぶ。超過と未充足が併記された8件は、法人内の定員の偏在を示す。北海道情報大学はシステム情報学科の超過と通信教育課程の未充足を同時に指摘されている。

「特になし」の3件は、八戸工業大学、東洋学園大学、東北学院大学である。八戸工業大学(300名対300名)と東洋学園大学(150名対150名)は新設定員と既設減少定員が一致するが、同じく一致する千葉工業大学(240名対240名)には既設5学部の超過が並び、北九州市立大学(118名対118名)に付されたのは校地に関する留意1件のみである。附帯事項の有無を分けるのは振替設計の精度ではなく、既設組織の定員と校地構成という、新設計画とは別の要因である。

2. 政策文脈 〜規則第13条の留意事項〜

附帯事項は法令上の位置づけを持つ。大学の設置等の認可の申請及び届出に係る手続等に関する規則(平成18年文部科学省令第12号)第13条は、文部科学大臣が「認可を受けた者又は届出を行った者」に対し、設置計画の履行に当たって留意すべき事項があると認めるときは、その内容を通知するものと定める。同規則第12条は、認可・届出の事実と基本計画書等に加え、この留意事項も公表の対象とする。届出一覧の附帯事項欄がこれである。

重いのは同規則第14条である。文部科学大臣は「設置計画及び留意事項の履行の状況」を確認するため必要があると認めるときは、報告を求め、又は調査を行うことができる。設置計画履行状況等調査は、その目的に「認可又は届出時の附帯事項への対応状況」を掲げ、届出により設置された学部等も対象とする。調査期間は原則として開設年度から完成年度の終わりまでだが、同調査において指摘事項が付された場合はこの限りでない。届出時の附帯事項は、この調査で対応状況が確認される対象である。

さらに学校教育法第4条第3項は、届出に係る事項が設備・授業その他の事項に関する法令の規定に適合しないと認めるときは、必要な措置をとるべきことを命ずることができると定める。命令の期限は届出の日から60日以内だが、当該届出と関連を有する認可の申請が行われている場合はこの限りでない(規則第11条)。附帯事項の多くは「是正に努めること」「留意すること」という文言で書かれ、それ自体は同項の命令ではない。ただし定年規程に関する事項は「着実に実行すること」と書かれ、令和8年7月分では欄の標記自体が「附帯事項【遵守事項】」に変わっている(同月分は1件のみで、内容は収容定員超過と校地に関する事項である)。届出は無審査の手続ではない。

3. 実務への影響 〜3つの論点〜

① 既設定員の連動点検

届出の対象は新設組織だが、点検されるのは大学全体である。日本大学大学院は5月分と6月分で同一の7項目を付されており、届出のたびに同じ指摘が公表される。明星大学大学院の理工学研究科再編には、8学部の超過と通信教育課程の未充足が並んだ。

② 校地分散への留意

7件に、二以上の校地で教育を行うことから学生及び教員の教育研究等に支障のないよう留意し、課外活動等にも配慮するよう求める事項が付された。日本体育大学大学院、東京医療保健大学大学院、北九州市立大学、松山大学、大阪産業大学大学院、秋田県立大学大学院、千葉工業大学である。

③ 教員年齢構成の点検

定年規程に定める退職年齢を超える基幹教員等の割合に関する附帯事項は、帝京科学大学、金沢学院大学、皇學館大学大学院の3件である。文言は、完成年度前に、定年規程の趣旨を踏まえた適切な運用に努めるとともに、教育研究実施組織における教員編制の将来構想を策定し着実に実行することを求める。大学院の1件では「基幹教員」ではなく「専任教員」の語が用いられている。

なお令和8年4月分は計54件のうち18件、約3割にこの事項が付されていた(短期大学の学科設置2件を含む)。5月分から7月分では27件中3件である。公表資料に理由の記載はなく、案件構成の違いか運用の変化かは読み取れない。

4. 実務上の対応 〜3つの準備〜

準備①:既設全学科の充足率棚卸し 届出の検討に入る前に、学部・学科・研究科の単位で超過と未充足の双方を洗い出す。通信教育課程は別建てで確認する(未充足の指摘は日本大学・早稲田大学・明星大学・北海道情報大学)。

準備②:校地構成の事前整理 二以上の校地で教育を行う計画であれば、学生・教員の移動負担と課外活動への配慮を設置計画の段階で文書化する。

準備③:学科単位の教員年齢構成の確認 開設時点の年齢を全員分逆算し、定年規程の退職年齢を超える者の割合を学科・専攻単位で把握する。あわせて教員編制の将来構想を、完成年度前に実行できる形で文書化する。

結び

問いは3つである。既設の学部・学科・研究科に、収容定員の超過または未充足はあるか。その状態で届出を出せば大学名入りで公表されることを織り込んでいるか。附帯事項への対応状況が設置計画履行状況等調査で確認されることを、完成年度までの体制に織り込んでいるか。

届出設置は認可審査を経ない。しかし27件中24件に事項が付され、その大半が既設組織の定員管理を指す以上、改組の実務は既設の足元の点検から始まる。


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参考資料

本レポートは2026年9月25日時点の公開情報に基づき作成しています。 株式会社UB研究所