令和8年9月7日の大学院部会に配付された資料は、研究科を単位とする段階別評価の設計案を示した。学部段階が7評価基準15評価項目であるのに対し、研究科は8評価基準12評価項目。ただし段階数も評語も導入時期も、資料上は確定していない

令和8年9月7日、中央教育審議会大学分科会大学院部会(第127回)に、大学院における新たな評価の設計案が配付された。参考資料1「大学院における新たな評価について」(29頁)のほか、学部と研究科の評価を対比した資料3-1、9月3日のワーキンググループ第13回の議論を整理した資料3-2である。

確定していない部分は多い。段階別評価は「3段階を検討してはどうか」という提案であり、評語も「例えば、星(3つ星、1つ星、要是正)にするなど」という例示にとどまる。ワーキンググループでは4段階とすべきという意見や、修士・博士・専門職学位を別評価とすべきという意見が出ている。導入時期の記載は、参考資料1の全29頁のどこにもない。読みどころは、まだ動いている段階表示ではなく、その手前に一貫して置かれている構造のほうにある。

1. 要点 〜研究科単位の3段階案〜

評価の単位は研究科である。資料3-1は研究科数を1,895(国立446、公立199、私立1,250)、学部を2,790(国立438、公立247、私立2,105)と示す。研究科の66%が私立にあたる。

段階の案は、①法令等で求められている水準に達していない研究科を「要是正」、②達している研究科を「1つ星(★)」、③②を前提に、学生の成長につながる優れた取組を通じて高い教育成果を上げている研究科を「3つ星(★★★)」とする3区分である。学部版が1つ星・2つ星・3つ星に要是正を合わせた4段階であるのに対し、研究科版には2つ星がない。ワーキンググループでは、社会から見た分かりやすさを理由に学部と同じ4段階(要是正、★1、★2、★3)にすべきではないか、途中のプロセスを★2として評価することが取組継続のインセンティブになる、といった意見が出た。他方、国内の基準で安易に★3を出してよいかを疑問視する意見もある。

判定方法の案は明快である。「自己点検・評価書の記載を基に質保証の視点により評価し、1つでも満たさない項目がある場合は『要是正』として判断する」。要是正の研究科には「文部科学省においてペナルティを含めたその後の対応を実施することを検討」とされ、文部科学省により早期の改善が確認されるなど、状況に応じて再評価の受審を可能とすることも検討事項とされる。ペナルティの内容も根拠法令も、資料には示されていない。

2. 政策文脈 〜学部版との対比〜

学部は大学設置基準等に基づく4つの基本的な方針のもと7つの評価基準・15の評価項目で、研究科は大学院設置基準等に基づく3つの基本的な方針のもと8つの評価基準・12の評価項目で評価することが想定されている。基準の数は増え、項目の数は減る。

方針の構成も入れ替わる。研究科版の3本柱は、Ⅰ明確な「養成する人材像」と3つのポリシーの策定・公表、Ⅱ適切な学位審査・円滑な学位授与の実施、Ⅲ学生の学びと成長の結果を基盤とした不断の自己改善である。学部版の4本柱のうち「教育課程・教育環境体制(AP・CP)」と「学修成果の適切な把握と評価」が独立の柱から外れ、学位審査・学位授与が新たな柱に上がる。

大学院版は、大学全体の評価を入口に置いたうえで基本組織ごとに段階別評価を行うという学部版と同じ構造をとりながら、柱の立て方では出口管理に軸足を移している。資料3-2にも「まずは学位審査等の出口管理に重点を置いた形で始め、様子を見ながらカリキュラム的な視点を追加していく」ことを一案とする意見が記録されている。

3. 実務への影響

① 大学全体評価の先行

参考資料1の8頁は「大学全体で評価する事項について(案)」として、大学組織の社会的信頼、全学的な内部質保証システムの手続及び体制、大学の目指すべき方向性に向けた点検・評価と内部質保証の3基準を置く。

ここに一文がある。「大学全体としての必要最低限の基準であるため、大学全体の評価にあたって基準を満たさない場合については、研究科ごとの評価を実施しない」。研究科の教育内容が評価される以前に、全学の要件が入口として機能する。

第1基準の判断例は2つで、法令や社会的倫理に則った大学運営がなされていること、および法令で全学的に求められている事項を満たしていることである。後者には、教員の年齢構成に配慮した上での必要な教員数、組織的な研修、必要な校地・校舎等、必要な大学情報の公表が挙がり、根拠資料例は教員数・校地校舎面積・情報公表のデータとされる。9頁は確認項目の例として大学院設置基準の条項を列挙し、教員の年齢構成(第8条第7項)、必置教員(第9条第1項)、収容定員と充足率(第10条第1項・第3項)などを含む。

② 出口管理の定量化

質保証の柱Ⅱ「適切な学位審査・円滑な学位授与の実施」は、評価項目の案として、「修了認定・学位授与の方針」(DP)に示す資質・能力に応じた適切な審査体制の整備、論文審査委員名の公表や口述試験の公開等(修士課程・博士課程)、修了認定及び学位授与の審査等に係る基準の設定と学生への明示を挙げ、質保証の視点として「指導教員ではない複数の教員による学位審査の体制が整備されていること」を置く。

基準③が「学位の授与が円滑に行われていること」である。質保証の視点として「標準修業年限以内で修了した者の占める割合が公表されていること」が置かれ、参考情報例に学位授与数と標準修業年限内修了率が挙がる。社会人学生や長期履修者の比率が高い研究科では、この割合は構造的に低く出る。ただし判定の閾値は示されていない。3頁は、教育課程の編成・実施や入学者の受入れに問題がないかを見る際の確認例として「標準修業年限内修了率が同分野における平均を大幅に下回るものとなっていないか」を挙げるが、原文は「等を確認することで評価できる?」と疑問符付きで示すにとどまる。9頁も「標準年限内修了率(分野ごとの平均値と比較?)」と、比較方法自体に疑問符を付した状態である。

③ 認証評価の一本化

24頁は専門職大学院の分野別認証評価を総括する。成果は3点挙がり、筆頭が適合割合の向上である。法科大学院68%→97%、その他専門職大学院95%→100%(第1サイクル・平成18年〜から第4サイクル・令和3年〜)。課題は4点で、実務上重いのは、専門職大学院に閉じた評価で通常の研究科等と比較できないこと、機関別認証評価や国立大学法人評価との重複感・負担感と受審費用負担である。

見直す点として「専門職学位課程も修士課程・博士課程と同じ枠組みで評価」「機関別・分野別認証評価を一本化し、重複を可能な限り排除する」が明記された。ただし法科大学院は法科大学院等特別委員会で別途検討すべきとされ、教職大学院の扱いも別途検討である。専門職大学院を置く法人にとっては、受審スキームそのものが組み替わる論点になる。

4. 実務上の対応 〜3つの準備〜

準備①:全学要件の棚卸し 教員数と年齢構成、校地・校舎面積、情報公表は、案のとおりであれば研究科の評価に進む前段で判定される。設置認可時の計画値ではなく現時点の実数で確認する。

準備②:標準修業年限内修了率の研究科別把握 研究科ごとに算出し、公表の有無を確認する。社会人・長期履修者の比率が高い研究科は、数値の説明材料をあわせて準備する。

準備③:学位審査の透明性の点検 論文審査委員名の公表と口述試験の公開(修士課程・博士課程)、修了認定基準の設定と学生への明示を、規程の有無と公表の実態の両面で確認する。学位論文に係る評価基準は修士課程・博士課程のみが対象である。

結び

問いは3つである。全学の設置基準適合と情報公表は、研究科評価の入口を通れる状態にあるか。研究科ごとの標準修業年限内修了率は、算出され公表されているか。学位審査の体制と基準は、規程だけでなく公表の実態として整っているか。

設計はまだ動いている。資料の前提として置かれているのは、評価の単位が研究科に下りること、大学全体の要件がその手前に置かれること、1つでも満たさない項目がある場合は要是正とする判定方法が組まれていることの3点である。第127回の議事録は、本稿執筆時点で公表されていない。


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参考資料

本レポートは2026年9月16日時点の公開情報に基づき作成しています。 株式会社UB研究所