令和9年4月1日付で確認を取り消されるのは私立大学3校・私立短期大学4校・私立専門学校13校。しかし同日公表の概要表が「確認取消校数」に計上したのは、大学・短期大学2校、専門学校8校である。差の10校は、取消一覧で備考欄に「募集停止校」と記された校数と一致する

令和8年9月2日、文部科学省は高等教育の修学支援新制度(大学等における修学の支援に関する法律・令和元年法律第8号)について、機関要件の更新確認結果を公表した。確認を取り消される大学等の一覧と、確認要件を満たさなくなった旨の届出の一覧が公表され、あわせて同日付で「機関要件の確認(更新確認)申請・審査の概要」が示されている。取消しの根拠規定はすべて法第13条第1項第一号、すなわち「確認大学等が、確認要件を満たさなくなったとき」であり、どの要件を満たさなくなったのかは公表資料に記載がない。

読みどころは備考欄にある。私立短期大学は4校すべてに、私立専門学校は13校のうち5校に「募集停止校」の記載がある。私立大学3校のうち記載があるのはルーテル学院大学のみで、三育学院大学と東京家政学院大学の2校には記載がない。募集を継続したまま、修学支援新制度の対象から外れる形である。

1. 要点 〜取消7校の構成〜

文部科学大臣が確認者となる分は7校である。私立大学が三育学院大学(学校法人三育学院)、東京家政学院大学(学校法人東京家政学院)、ルーテル学院大学(学校法人ルーテル学院。備考「募集停止校」)の3校。私立短期大学が札幌国際大学短期大学部、共愛学園前橋国際大学短期大学部、相模女子大学短期大学部、愛知医療学院短期大学の4校で、いずれも備考に「募集停止校」とある。あわせて各地方公共団体が確認者となる私立専門学校13校が取り消された。効力発生日はいずれも令和9年4月1日である。

在学者には経過措置がある。法第14条は、取消しの際に授業料等減免対象者が在学しているときは、その者に係る授業料等減免については当該大学等を確認大学等とみなして法を適用すると定める。減免費用の支弁(法第8条)と国の負担(法第9条)が適用されないのは、不正の手段による確認取得(第13条第1項第二号)、減免費用に関する不正行為(第三号)、およびこれらに準ずるものとして政令で定める場合に限られる。給付型奨学金の側は、独立行政法人日本学生支援機構法第17条の2第1項が根拠となる。今回はいずれも第一号であり、認定済みの在学生の支援は継続する。

前年度と比べると規模は縮んでいる。令和7年8月29日公表の取消しは私立大学7校・私立短期大学8校・私立専門学校15校で、大学・短期大学の合計は15校から7校へ減った。ただし同公表資料には備考欄がなく、募集停止校の別は示されていない。

2. 政策文脈 〜機関要件の二層構造〜

令和8年度以降の機関要件は二層で構成される。第一層の教育要件は全設置者に共通で、①実務経験のある教員等による授業科目が標準単位数の1割相当以上、②法人の役員に外部人材が2人以上、③シラバスやGPA等による厳格かつ適正な成績管理の実施・公表、④財務諸表等・定員充足状況・進学就職状況の公表、の4項目である。

第二層の経営要件は私立学校のみに課される。1つは法人の決算に関する要件で、直近3年度いずれかの収支計算書の「経常収支差額」と、直近年度の貸借対照表の「運用資産-外部負債」の、少なくとも一方がプラスであること。もう1つは収容定員充足率に関する要件で、直近3年度いずれかの在籍学生数が収容定員の8割以上(専門学校は5割以上)であることを求める。

地方における学校の役割の重要性を踏まえた猶予は、経営要件2以外の要件を満たしている場合に働く。判断基準は学校種で分かれる。大学・短期大学・高等専門学校では、直近年度の充足率が5割以上かつ進学・就職率が9割を超えるとき、それも満たさない場合でも同一道府県内(首都圏大都市部を除く。北海道は同一の二次医療圏内)に同種・同学位分野の代替進学先がないときに猶予される。専門学校は、重要な専門人材の育成に貢献していると都道府県知事が認める場合である。再申請の特則も大学・短期大学・高等専門学校に限られ、直近3年度すべての充足率が6割以上かつ進学・就職率9割超の場合も申請可とされている。

この8割は、設置認可の基準で問われる収容定員充足率とは根拠も判定単位も異なる。同じ「充足率」という語で一括管理すると誤る。

3. 実務への影響

① 公表統計と実数の乖離

同日公表の概要は、大学・短期大学について学校数1,012校、確認校数(令和8年4月1日)972校、新規確認3校、確認取消校数(令和8年度)2校、確認校数(令和9年4月1日)973校、要件確認割合96.1%と整理する。専門学校は2,562校・2,047校・24校・8校・2,063校・80.5%、高等専門学校は58校・57校・新規確認および取消なし・57校・98.3%である。

取消一覧の7校と概要表の2校の差は、注記から説明がつくとみられる。概要表の注1は、学校数に「大学院大学、学生募集停止(予定を含む)・休校・廃校等を含まない」と明記する。取消しとなった大学・短期大学7校のうち備考「募集停止校」は5校で、差は2校。専門学校13校のうち5校が「募集停止校」で、差は8校。いずれも概要表の取消校数と一致する。ただし注1が明示的に係るのは学校数の欄であり、文科省が取消校数の内訳を説明したものではない。

いずれにせよ96.1%という要件確認割合は、募集を継続している大学等を母集団とした割合である。自校の位置づけを測る指標として引用する際は、分母の定義を確認する必要がある。

② 募集への直接波及

効力発生日が令和9年4月1日である以上、影響は令和9年度入学者から生じる。給付型奨学金と授業料等減免が使えない大学として、入試広報の局面に立つ。

東京家政学院大学は9月3日、「【重要】高等教育の修学支援新制度に係る確認の取消しについて」を公表し、令和9年度以降の新入生が制度の対象外となること、現に認定を受けている在学生は取消し後も支援を受けられること、そして大学独自の修学支援制度を新設する予定であることを明らかにした。取消しは、募集要項の記載変更と自己財源による代替措置の設計を同時に迫る。

③ 判定時点と事前予見性

経営要件2と、経営要件1の経常収支差額は「直近3年度いずれか」で判定される(運用資産-外部負債のみ直近年度)。充足率でいえば、8割を3年連続で下回って初めて要件を外れる。充足率(経営要件2)を外れても、前記の猶予に該当すればその年度の取消しは猶予される。確認は毎年度行われるため、免除ではなく先送りである。

判定材料は3年分の自校実績である。2年連続で条件を下回った時点で翌年度の帰趨は検算でき、猶予規定の適用可否も同様である。加えて法第7条第1項第一号は、確認要件を満たさなくなったときの届出を設置者に義務づけている。実際、同日には同じ20校について届出の一覧も公表されている。文部科学省の「機関要件の確認事務に関する指針」は、設置者の届出を受けて確認者が状況を確認し、そのうえで取消しに至る標準的な処理を示している。ただし法第13条第1項は、届出の有無を取消しの要件とはしていない。届出義務の履行と取消処分は、別の手続として整理しておく必要がある。

4. 実務上の対応 〜3つの準備〜

準備①:経営要件2項目の3年分自己判定 直近3年度の経常収支差額と直近年度の運用資産-外部負債は法人単位で、直近3年度の収容定員充足率は確認大学等(学校)単位で並べ、いずれの年度で条件を満たしているかを確定する。条件を満たしている年度が判定期間から外れる時点が、実質的な期限になる。

準備②:取消し前の代替措置・広報設計 自己財源による支援制度の新設、募集要項・ウェブサイトの記載、在学生への通知は、効力発生日ではなく公表日から必要になる。東京家政学院大学の対応は公表翌日である。

準備③:定員政策の二系統検算 修学支援新制度の8割と、設置認可基準側で問われる収容定員充足率は別の物差しである。定員減を検討する場合、分母が下がることで機関要件は満たしやすくなる一方、認可申請の可否や届出の要否は別途判定される。

結び

問いは三つである。自校の経営要件2項目は、直近3年度のどの年度で満たされているか。その年度が判定期間から外れるのはいつか。外れた場合の代替措置と広報は、誰が設計するか。

取消し一覧に載った20校のうち、備考に「募集停止校」とないのは10校である。統計上の「確認取消校数」は、この10校に対応する数とみて整合する。募集を続けている学校が制度から外れる事象だけが、公表統計の表面に残る。


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参考資料

本レポートは2026年9月9日時点の公開情報に基づき作成しています。 株式会社UB研究所