大学の新設は4校申請して2校、大学院大学は4校申請して0校。答申は「可」しか載せないため、諮問一覧と突き合わせて初めて分母が見える。前年度は、8月に審査継続とされた16件のうち14件が10月の答申で可となっている

令和8年8月28日、大学設置・学校法人審議会は令和9年度開設予定の大学等の設置認可について答申を行った。判定を「可」とされたのは、大学2校、学部8校、学部の学科3校、短期大学の学科における通信教育課程1校、大学院の研究科6校、研究科の専攻設置又は課程変更7校である。文部科学省は同時に、「審査の過程において申請の取下げが21校(22件)〔略〕あり,また,11校(11件)〔略〕が審査継続(保留)となっている」と注記した。

答申が公表するのは「可」だけである。件数を眺めても、何校が申請していたかは分からない。分母は諮問の一覧にある。そして分母と分子の関係は、10月末の答申と来年からの審査スケジュールの両方で動く。

1. 要点 〜諮問と答申の突合〜

諮問は2回に分かれている。大学・大学院大学の新設は令和7年10月末申請分が同年11月10日に、学部・大学院等は令和8年3月末申請分が同年4月7日に諮問された。申請時期は異なるが、答申はいずれも8月28日である。

区分ごとに諮問と答申を突き合わせると、次のようになる。大学の設置は4校の申請に対し2校、大学院大学の設置は4校に対し0校、学部の設置は19校に対し8校、学部の学科の設置は5校に対し3校、学部における通信教育課程の開設は1校に対し0校、短期大学の学科における通信教育課程の開設は1校に対し1校、大学院の設置は2校に対し0校、研究科の設置は10校に対し6校、専攻の設置又は課程の変更は11校に対し7校である。

学部の設置は8校を19校で除して約42パーセント。申請の6割近くが8月時点で「可」に至っていない。ただしこれを「不合格率」と読むのは正確ではない。答申に載らなかった案件は、公表されている限り取下げか審査継続のいずれかで、その別は個別に公表されない。

2. 政策文脈 〜審査継続制度の実績と新スケジュール〜

前年度の実績がこの点を示す。令和8年度開設は、令和7年8月29日の答申で大学3校・学部12校ほかが可とされ、注記は取下げ10校(11件)・審査継続16校(16件)と記していた。その2か月後、令和7年10月28日の答申(実務上いう第2次答申)で、大学2校・短期大学1校・学部5校ほか合計14件が「可」となった。同答申の注記にある取下げは2校(2件)である。8月に審査継続とされた16件のうち14件が10月に可となり、2件が取り下げられた計算になる。

つまり令和8年度開設の実績は、大学の新設が3校ではなく5校、学部の設置が12校ではなく17校であった。8月の答申だけで年度の認可実績を語ると実像を取り違える。令和9年度開設の審査継続11件も、例年10月末に行われる追加の答申を待って帰趨が分かる。

この構造は、令和10年度開設分から変わる。大学の設置等に係る提出書類の作成の手引(令和10年度開設用、令和8年7月10日掲載)の標準審査スケジュールでは、大学新設は開設前々年度の9月末に申請し、10月に諮問、11月末と3月末の2回の審査意見伝達を経て7月末に認可。学部等新設は1月末に申請し、2月に諮問、3月末に1回の審査意見伝達を経て7月末に認可である。標準処理期間は大学新設10か月、学部等設置6か月とされる。この2つの図には、判定を保留して審査を継続する分岐が置かれていない。次ページに置かれた収容定員変更認可の図には「必要に応じ判定保留とし審査を継続」が明示されており、書き分けられている。前年の手引(令和9年度開設用)では、大学等の新設と学部・大学院等の設置のいずれの図にも、末尾に「必要に応じ判定保留とし審査を継続」が置かれていた。令和10年度開設用では、この枠が設置認可の両図から消え、収容定員変更認可の図にのみ残っている。同一年度内の書き分けであると同時に、前年からの削除でもある。新しいスケジュールには、審査継続という中間的な着地点が置かれていないと読むのが自然である。

3. 実務への影響

① 認可率 〜分母と時点の設定〜

学部設置の約42パーセントは、あくまで8月答申時点の数字である。理事会に見通しを説明する際は、8月時点の率と追加答申を含めた最終の率を区別しなければならない。審査継続が織り込まれなくなれば、答申時点の率がそのまま年度の率になる。同じ「認可率」という語の中身が入れ替わる。

② 審査意見 〜申請時期の前倒し〜

この標準審査スケジュールでは、審査意見伝達は大学新設で2回、学部等新設で1回である。回数そのものは令和9年度開設用の手引と変わらず、学部等の標準処理期間はむしろ5か月から6か月に延びている。変わるのは申請の時期である。学部等の申請は3月中旬から下旬頃であったものが1月末となり、約2か月前倒しになる。申請者は1月末に申請し、3月末に一度だけ意見を受け、5月末の補正申請書で応じ、7月に判定という流れになる。図には「申請内容を抜本的に見直す必要がある場合等は『警告』を付す」とも付記されている。意見を受けられるのが一度きりである点は従来と同じだが、そこに至るまでの準備期間が2か月短い。申請書の初期完成度がそのまま結果になる度合いは強まる。

③ 附帯事項 〜開設後の経営監視項目〜

附帯事項を機関単位で数えると、傾向が出る。学部等一覧に掲載された12機関のうち7機関に、「完成年度前に、定年規程に定める退職年齢を超える基幹教員数の割合が高いことから、定年規程の趣旨を踏まえた適切な運用に努める」旨の遵守事項が付された。「収容定員に見合った学生の確保に努める」旨は11機関、経営基盤の安定確保は9機関に及ぶ。定員超過または未充足の是正・改善を求める事項も複数機関に付された。審査されるのは新設組織の教学だけではない。法人の教員編制、既設学部の充足状況、財務の配分が、そのまま附帯事項になる。

4. 取下げの実相 〜自主公表3校の共通点〜

答申は取下げの内訳を公表しない。しかし今年は、申請者自身が公表した例が複数あった。

博多大学(仮称・データサイエンス学部)は8月20日、設立準備会の名で「近年の18歳人口の減少をはじめ、大学設置を取り巻く環境が一層厳しさを増すなか、諸般の状況について慎重に検討を重ねた結果、誠に遺憾ながら設置計画を断念することといたしました」と公表した。同法人は令和7年4月開学を目指した申請を取り下げ、令和8年4月開学で再申請、さらに令和9年4月へ延期しており、今回が3度目の申請取下げであり、かつ設置計画そのものの断念にあたる。

富士大学(令和9年4月に「いわて富士大学」へ名称変更予定。スポーツ健康科学部)は8月27日、「誠に遺憾ながら、諸般の事情のため、申請を取り下げることとし、8月25日に文部科学省へその旨届を提出」と公表した。ぐんま未来大学(スポーツデジタル学部)も同27日、同様の文面で8月26日に届け出た旨を公表している。いずれも答申日である8月28日の直前である。ただし富士大学は同じ公表文で、設置の時期を見直し「2028(令和10)年4月の開設を目指す」と明言している。3校のうち再挑戦を表明したのは同校のみである。

本稿で確認できた範囲では、3校に共通するのは、いずれも大学・高専機能強化支援事業(成長分野転換基金)の採択校であった点である(ぐんま未来大学の採択時の名称は桐生大学、学科名は健康科学部スポーツデジタルイノベーション学科)。同事業は令和9年度概算要求で1,100億円の基金積み増しが要求されており、成長分野への転換を政策的に後押しする枠組みだが、採択されたことが設置認可の帰結を保証するものではない。

実務上の含意は二つある。第一に、答申に載らなかった案件の帰趨は、申請者自身の公表によって判明する場合がある。競合分析では、答申の注記だけでなく各法人の公表を確認する必要がある。第二に、公表があるのは一部にとどまる。取下げは21校(22件)に上るが、自主公表を確認できたのは3校である。その3校の公表は8月20日から27日、すなわち答申日の直前1週間あまりに集まっていた。8月下旬は、自校の判断も他校の動向も同時に動く時期である。

さらに、来年度以降はこの局面の意味が変わる可能性がある。審査継続という中間的な着地点が置かれない場合、審査の過程で計画の作り込みが間に合わないと判断されたときの選択肢は、これまでと同じ形にはならない。取下げを促す運用が従来どおり働くのか、あるいは判定そのもので決着する運用に寄るのか、現時点では見通せない。いずれにせよ、8月下旬になってから進退を考える前提では間に合わないという点は、変わらないどころか強まる。

5. 実務上の対応 〜経営層が着手すべき3つの準備〜

準備①:申請日程を「一発勝負」の前提で引き直す 令和10年度開設の大学等の新設は、予約期間が令和8年8月31日から9月4日、受付期間が9月14日から18日。学部・大学院等は予約が12月14日から16日、受付が令和9年1月5日から8日である。新設の予約は、本稿掲載日である9月4日が最終日にあたる。

準備②:基幹教員の年齢構成を、申請前に作り替える 定年規程の退職年齢を超える基幹教員の割合に関する遵守事項は、12機関中7機関に付された。名簿を確定してからでは動かせない。定年規程と教員編制の将来構想を、調書作成の前段で突き合わせる。

準備③:既設組織の充足率を、申請書の一部として扱う 新設の設計が整っていても、既設学部の超過や未充足は附帯事項として残る。是正計画を申請前に作り、申請書に織り込む。

結び

問いは三つである。自校の申請は、一度の答申で決着する前提で設計されているか。審査意見を一度しか受けられないとして、その一度で応じきれる完成度が申請時点にあるか。附帯事項として付されうる指摘――高齢基幹教員、既設の充足率、納付金の配分――のうち、いま自校に当てはまるものはいくつあるか。

学部設置19校申請、8校可。この分数の意味は、10月末の答申と来年の審査スケジュールで、二度変わる。


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参考資料

本レポートは2026年9月4日時点の公開情報に基づき作成しています。
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