令和8年9月24日、学校法人獨協学園・一般社団法人徳洲会・学校法人徳洲会の三者が、姫路獨協大学の設置者変更に係る契約を締結した。効力発生は令和10年4月1日の予定、認可申請は令和9年1月の予定である。同大の収容定員充足率は令和8年5月1日現在で38.2%。学校教育法側の認可基準はこの申請に適用されない一方、私立学校法側の寄附行為認可審査では同じ0.7が逆向きに働く。

学部の新設や収容定員増の認可申請には、収容定員充足率が0.7倍を上回ることという要件がかかる。令和9年度・10年度開設分は経過措置により0.5倍、11年度開設分から0.7倍である。ただし同号のただし書は、0.7倍以下の学部等をすべて廃止する計画を有し、かつ収容定員の総数が増加しない場合を適用除外とする。

設置者の変更は、これらの要件の適用対象から条文上さらに広く除かれている。公立化も同じ学校教育法第4条第1項の設置者変更であり、獨協学園は令和3年に姫路市へ公立化を要望したが、令和4年4月に「困難」と回答されている。同一条文の別ルートが閉ざされた後の出口である。

1. 要点 〜38.2%の内訳〜

姫路獨協大学の公表する収容定員は、学部1,620人と大学院20人の計1,640人である。在籍者は令和8年5月1日現在で学部624人、大学院3人の計627人。充足率は38.2%となる(大学公表資料からの算出値。告示上の充足率は学部又は学科の単位で判定し、大学院を含まない)。

学部・学群別では、最も低いのが看護学部看護学科(収容定員320人)の24.1%、次が薬学部医療薬学科(320人)の30.3%、次が医療保健学部(560人)の37.9%、最も高いのが人間社会学群(420人)の56.7%である。告示上の判定単位である学科・学類でみると、9組織のうち0.7を上回るのは理学療法学科の71.9%と産業経営学類の70.3%の2つにとどまり、最も低いのは臨床工学科の11.9%である。徳洲会側の公表文が掲げる「医療系分野の教育をさらに充実させる」という目的の対象領域が、学部・学群単位では充足率の下位を占める。公表文は続けて「人間社会学群を含む大学全体の教育・研究機能を発展させていく」とも述べる。

薬学部医療薬学科は令和7年度入学者から募集を停止したが(令和6年4月1日公表、令和6年度入学者が最後の学年)、収容定員320人は学則上なお残る。人間社会学群の国際言語文化学類(50人)と現代法律学類(60人)も、在籍者は4年次のみだが定員は残存する。

2. 政策文脈 〜適用除外の範囲〜

「大学、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準」(平成15年文部科学省告示第45号、最終改正令和8年3月13日)第1条は、審査基準を列挙する前に適用範囲を限定する。文部科学大臣が審査の基準とするのは、学校教育法第4条第1項の認可のうち「設置者の変更及び廃止に係るものを除く」ものである。ただし括弧書は「次条第一号及び第五条第一項を除き、以下同じ」と続く。除外が解かれるのは第2条第1号と第5条第1項だけであり、認可をしないという効果を定める第2条の本文は除外されたままである。第2条第1号で除外が解かれる意味は、偽りその他不正の行為があった申請を数えるにあたり、設置者の変更及び廃止に係る認可の申請も算入されるという点にある。

第1条が審査の基準とするのは、その他の法令に適合すること及び次に掲げる要件を満たすことである。除かれる要件は6つある。長期的かつ安定的な学生確保の見通し、人材需要の動向を考慮した教育研究上の目的、充足率1.15倍未満、同0.7倍を上回ること、歯科医師・薬剤師・獣医師・船舶職員の養成に係る設置若しくは収容定員増又は医師の養成に係る設置でないこと、法科大学院の設置でないことである。設置者変更の申請には同条自体が適用されず、このいずれも審査されない。

審査体制も別である。大学設置分科会運営規則第2条第2項は、「分科会の所掌事務のうち」学校教育法第4条第1項の認可(設置者の変更及び廃止に係るものを除く。)の申請の審査に関する事項を審査会が処理すると定める。外れるのは審査会への配分であって、分科会の所掌そのものではない。審査会による審査意見という枠組みは制度上置かれていない。提出書類は12点で、「設置の趣旨等を記載した書類」は「変更の事由及び時期を記載した書類」に置き換わり、教員個人調書も「学生の確保の見通し等を記載した書類」も求められない。前提は、変更の前後における教育研究実施組織及び教育課程等の同一性である。

3. 実務への影響 〜3つの論点〜

① 寄附行為審査の加重

軽くなるのは学校教育法側だけである。私立学校法側では、引受け法人と譲渡法人の双方が寄附行為変更の認可を要する。「学校法人の寄附行為及び寄附行為の変更の認可に関する審査基準」(平成19年文部科学省告示第41号)第五は、設置者の変更が組織・校地・施設設備の同一性を保持しつつ行われることを要件とし、変更後の財務状況等により必要と認められる場合は負債率及び負債償還率の基準を弾力的に取り扱えるとする。

ただし第五の二(三)は、設置者変更を行おうとする大学等に置かれている学部又は学科の充足率が0.7を下回る場合、「経営に必要な財産」について準用する規定の範囲を広げる。差分は第一の三(五)である。学生納付金収入の単価と学生数が、入学希望者数の長期的な動向と人材の需要の動向、競合する大学等の充足状況の調査結果、学生募集に関する取組の効果という3点の分析により合理的に算定されていることが求められる。学校教育法側で適用除外となった第1号と第2号の実質が、私立学校法側で復活する構造である。判定は学部又は学科単位であり、全体の充足率が良好でも1学科が0.7を下回れば発動する。学部等単位で設置者変更を行う場合(第五の三(三))は、差分が第一の三(五)に加えて(八)にも及ぶ。

充足率はもう一つの場面でも働く。第五の二(五)が準用する第二の五(二)は、引受け法人の既に置かれている学部又は学科の充足率を要件とする。ただし令和8年3月13日改正告示の附則第二条は、令和10年度に行おうとする設置等に伴う寄附行為の変更の認可の申請に係る審査のうち、第五の二(五)において準用する第二の五(二)に係る審査については「なお従前の例による」と定める。従前の規定は0.5を上回ることであり、本件に及ぶ水準は0.7ではない。引受け側に0.7が働くのは令和11年度以降の案件からである。学校法人徳洲会は令和2年4月開学の湘南鎌倉医療大学を設置しており、水準はいずれであれ引受け側の充足率も与件になる。

② 募集の可否と名称変更

手引は、大学全体の設置者変更について、認可申請中でも変更前の設置者として学生募集を行える条件を2つ挙げる。契約書・協定書等で組織的な連携体制が構築され、前年度の募集活動の責任主体が明確化されていること。募集関係書類・ホームページ・大学案内等に「設置者変更の認可申請中であること」「認可後は当該大学の設置者が変更となること」を大きく明確に記載することである。三者の公表文は、在学生の教育環境及び修学について「引き続き獨協学園が責任を持って対応いたします」と明示する一方、志願者への対応は「徳洲会と獨協学園が協力して進めてまいります」とする。募集活動の責任主体は契約書・協定書等で確定される事項であり、公表情報からは判別できない。手引はさらに、認可されなかった場合の運営継続や学納金の変更点の明示など、学生の不利益にならないよう必要な情報を周知するよう努めることを併せて示す。

認可書到着前に学生募集及びそれに類する行為が一切行えない場合が2つある。設置者変更に伴い名称の変更を行う場合と、学部等単位で設置者変更する場合である。報道では大学名は今後の検討とされている。名称変更を同時に行う選択は、認可書の到着時期によって令和10年4月入学者の募集可否を左右する。

③ 認可後の調査期間

認可後は、寄附行為変更認可後の財政状況及び施設等整備状況調査の対象となる。平成30年8月24日の学校法人分科会長決定により、設置者の変更で大学等の設置者となる学校法人も対象である。調査期間は、設置者の変更が認可された時点における当該大学等の学部等のうち、最も修業年限が長い学部等の修業年限と同じ期間である。6年制の学部等が学則上残る時点で認可を受けるなら、調査期間は6年となる読みである。

学生確保に関する調査方針(令和5年6月12日学校法人分科会長決定)は、大幅な定員割れの場合に原因分析と改善方策の資料を求めて学生確保審査特別部会で書面調査を行うとする。同審査基準第六は、計画及び附帯事項が履行されていないと認定したときは5年以内で相当と認める期間、第一から第五までの規定に基づく認可をしないと定める。

4. 実務上の対応 〜3つの準備〜

準備①:手続分岐の確定 手引は、私立学校法第126条第3項の合併の認可による設置者の変更については設置者変更の申請が不要と明記する。譲渡か合併か、大学全体か学部等単位かで申請の本数と受付期間が変わる。資格養成課程の指定・課程認定は別系統の手続であり、所管課への確認を要する。設置者変更の認可案件は文部科学省のWeb相談の受付対象である。

準備②:議決の設計 寄附行為の変更の理事会決議は、議決に加わることができる理事の数の3分の2以上を要し(私立学校法第42条第2項第1号)、特別の利害関係を有する理事は議決に加わることができない(同条第3項)。大臣所轄学校法人等では評議員会の決議がなければ効力を生じない(第150条)。校地が申請時までに、施設又は設備が開設時までに自己所有とならない特別の事情があると認められる場合は、相手方法人の理事会で開設時までに所有権を移転させる議決を申請時までに得ておけば、自己所有とみなされる(第五の四)。

準備③:残存定員の棚卸し 基本計画書は、募集停止中の学部等について、残存する入学定員と編入学定員の合計を収容定員の項に括弧書きで記入し、備考欄に募集停止の時期と廃止予定時期を記載することを求める。募集停止から廃止までの各組織の位置を時期まで確定する。

結び

問いは3つである。手続は設置者変更か合併か、大学全体か学部等単位か。充足率0.7を下回ることで追加される学生納付金収入の算定根拠を、どの資料で立証するか。名称変更を同時に行うかを、認可書の到着時期と募集の開始時期から逆算して決めているか。

設置者変更は、学校教育法側では学生確保の見通しも人材需要も審査されない手続である。しかしそれは、募集力の回復が担保されていることを意味しない。同じ問いは私立学校法側の寄附行為認可審査で問われ、認可後6年に及びうる調査でも問われる。審査が軽い手続ほど、認可の後に重心が移る。

UB研究所は、設置者変更・学部譲渡の手続設計、寄附行為変更認可申請、収容定員設計、認可後の調査対応に関する実務支援をご提供しております。お気軽にご相談ください。

参考資料

本レポートは令和8年10月2日時点の公開情報に基づき作成しています。

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