令和8年10月9日、文部科学大臣は令和8年9月末申請分の設置認可を大学設置・学校法人審議会に諮問し、文部科学省は「令和10年度開設予定大学等認可申請一覧」を公表した。大学の設置5校、大学院大学の設置3校、高等専門学校の設置1校の計9件である。大学5校の入学定員は合計750人、うち475人が通信教育課程である(学科別定員からの当社集計)

本稿は、9月に掲載した「令和9年度設置認可答申の構造分析」と対になる。9月の稿は審査の出口(答申)を扱い、本稿は入口(諮問)を扱う。今回の一覧は、申請時期を前倒しした新しい審査スケジュールの下で公表された最初の申請一覧にあたる。

1. 要点 〜申請9件の内訳〜

大学の設置は私立5校、5学部6学科である。ビルト大学(秋田県秋田市、人間科学部の地域共創マネジメント学科50人・グローバル栄養学科50人)、仙台赤門医療大学(宮城県仙台市、看護学部看護学科80人)、スポーツ科学大学(栃木県栃木市、スポーツ情報科学部スポーツ情報科学科250人、通信教育課程)、バリアフリー教養大学(東京都武蔵野市、リベラルアーツ学部リベラルアーツ学科225人、通信教育課程)、高志大学(富山県射水市、経済経営学部経済経営学科95人)が並ぶ。

大学院大学の設置は私立3校である。地球共創大学院大学(宮城県白石市、地球共創学専攻・修士課程50人)、環境経営大学院大学(岐阜県大垣市、環境経営専攻・専門職学位課程45人)、パソナNATUREVERSE大学院大学(兵庫県淡路市、地域創生マネジメント専攻・専門職学位課程80人)で、入学定員の合計は175人となる。高等専門学校の設置は公立1校、滋賀県立高等専門学校(滋賀県野洲市、工学科120人)である。

2. 政策文脈 〜前倒し後の初回〜

令和9年度開設分の大学新設は、令和7年10月末に申請され、同年11月10日に諮問された。今回は9月末申請、10月9日諮問である。「大学の設置等に係る提出書類の作成の手引(令和10年度開設用)」は、令和8年3月13日付けの省令改正に基づき、大学等の新設に係る認可申請が従来から1か月前倒しとなったと明記する。受付期間は令和8年9月14日から18日とされていた。

同手引の標準審査スケジュールによれば、大学新設は10月の諮問の後、11月末と3月末の2回の審査意見伝達、1月末と5月末の2回の補正申請書提出を経て、7月に判定・答申、7月末に認可となる。標準処理期間は10か月である。9月の稿で述べたとおり、この図には判定を保留して審査を継続する分岐が置かれていない。今回の9件は、令和9年7月の判定で帰趨が決まる日程に乗っている。

3. 実務への影響 〜3つの論点〜

① 通信教育課程の比重

大学5校の入学定員750人のうち、通信教育課程はスポーツ科学大学250人とバリアフリー教養大学225人の計475人で、63.3%を占める。通学課程は3校4学科の275人で、1学科あたり50人から95人である。

通信教育課程は、政策資料の数値の外に置かれることがある。前稿で扱った私立大学601校の資金ショート推計は、対象から短期大学、通信制大学、大学院大学及び募集停止中の大学を除いていた。新設の定員が通信制に寄るほど、通学課程を前提にした推計と、実際の学生獲得の競合関係との間にずれが生じる。通信制の新設は所在地の商圏に縛られにくく、位置が他県であることだけでは競合しない理由にならない。

② 再申請案件の存在

9件のうち3件は、令和9年度開設予定の申請一覧(令和7年11月)にも同じ大学名で掲載されていた。バリアフリー教養大学は学部・学科名、定員225人、位置とも前回と同一である。環境経営大学院大学は定員45人のまま、研究科・専攻の名称が「経営研究科経営専攻」から「環境経営研究科環境経営専攻」に変わった。パソナNATUREVERSE大学院大学は名称を維持し、定員が120人から80人になった。

令和9年度開設分は、大学院大学4校の申請に対し、令和8年8月28日の答申で可とされたものがなかった。大学は4校の申請に対し可は2校で、バリアフリー教養大学は可の2校に含まれていない。各校が取下げと審査継続のいずれであったかは、答申では個別に公表されない。確認できるのは、8月に可とされなかった大学が、一部は研究科・専攻の名称や定員を改めて翌年度の一覧に載っているという事実である。審査継続の分岐が図にない令和10年度開設分では、7月に可に至らなければ開設が1年遅れる前提で臨む必要がある。

③ 設置主体の広がり

一覧の設置者欄に「申請者」が別記された案件が3件ある。バリアフリー教養大学設立準備委員会、一般社団法人地球共創学園設立準備会、一般財団法人パソナ専門職大学院設立準備財団である。設置者となる学校法人を新たに設立する計画と読め、法人の設立と大学の設置が並行して進む形とみられる。

高等専門学校の設置者は公立大学法人滋賀県立大学である。地方独立行政法人法第21条第2号は、地方独立行政法人の業務の一つに「大学又は大学及び高等専門学校」の設置及び管理を掲げており、公立大学法人が大学と併せて高等専門学校を設置する形はこの規定に沿う。15歳からの5年一貫の工学系課程が公立で新設されれば、工学系学部を持つ近隣の大学にとっては、入学者の手前の段階で進路が分かれる要因になる。

4. 実務上の対応 〜3つの準備〜

準備①:競合案件の特定 一覧から、自学と分野または地域が重なる案件を抜き出す。通信教育課程は地域を問わず対象に加える。判定は令和9年7月の見込みであり、それまでは各申請者の公表(設置構想、学費、募集計画)が主な情報源になる。

準備②:申請日程の再確認 令和10年度開設の学部・大学院等の認可申請は、予約期間が令和8年12月14日から16日、受付期間が令和9年1月5日から8日である。前年度までの3月末申請から2か月早い。

準備③:名称と趣旨の点検 今回の一覧には、地域共創マネジメント学科、地球共創学専攻、地域創生マネジメント専攻と、「地域」または「共創」を含む名称が3件ある。同種の名称で新設・改組を構想している場合は、名称ではなく、養成する人材像と教育課程の中身で違いを説明できるかを確かめる。

結び

問いは3つである。自学の学生募集と重なる新設案件を、通信教育課程まで含めて把握しているか。自学の申請計画は、可に至らなければ1年遅れるという前提で日程と資金を組んでいるか。構想中の学部・学科の名称は、同じ語を掲げる他校と並べたときに中身で区別できるか。

申請一覧は認可の結果ではない。9件の判定は、標準審査スケジュールどおりなら令和9年7月である。それでも、どの分野に、どの課程形態で、誰が大学を作ろうとしているかは、この3枚の一覧で読み取れる。


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参考資料

本レポートは令和8年10月16日時点の公開情報に基づき作成しています。 株式会社UB研究所

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